月の歩幅

記憶の重たさに

声を閉じてしまった

一人の女の人は

小さな紙切れに

言葉を書きつらね

わたしは隣で

生まれてくる文字に目を凝らしている。

 

 

話す言葉だとしたならば

かなりの文字数になるのだろうけれど

紙切れは手のひらに収まる小ささなので

凝縮された気持ちがこぼれるようだ。

 

彼女には行きたい場所がある。

「一緒にゆきましょうか」と言う問いかけに

彼女は初めてNOという。

 

よしゃっ

と心で言う。

 

歩幅

速度

呼吸

 

背筋が伸びる。