幽霊はここにいない

「ここ

 幽霊が出ないからいいわ」

 

仕事場に入ってきた女性が言った。

天気の話でもするように言った。

 

逆でなくてよかった。

ホントによかった。

 

言葉の間だとか

話す速度というのにも

絶妙なタイミングがあるものだ。

 

話しかけてから

返事が返ってくるまでに

長い間があり

返事するの嫌なのかな?

思う頃になって

返事する人がいる。

(そして確固たる意思表示をする彼女であった)

 

その人と話す機会は

多くはないのだけれど

八百屋さんが店先でやっている美味しいジュースの中で

次に何を飲むかを決めていることや

歩いて15分の店は遠いから嫌であり

電車で1時間の距離にある行き慣れた美容室に行くほうが

「近い」ということなど話してくれる。

 

人はふぞろいだ。

きっと自分と同じように感じているだろうと考えていても

全く根拠がない。自信がない。

 

「幽霊はここにいる」

 

そう言われたら

実際のところ

何がいるんだかもわからない。