砂と女

 

 

夜中に目が覚めたら窓の桟に

小さな虫が眼鏡をかけて本を読んでいるのが見えた。

 

「あなたの困りごとの理由は全部知っています。」

そして全て上手くいくように計らってくれる。

そんな虫のいい話が小説にあった。

夢野久作氏「キキリツツリ」

 

 

 

 

昨日、娘に連れられてお付き合いしている人の家族に会った。

娘が口やかましく「きちっとしろ」というので

普段のわたしを如何に否定的に見ているのか改めて知った。

 

途中までは、あえて反抗するのも面倒なので言うことを聞こうかと思ったが

あんまり細かいので言うとおりにしないことに決めた。

 

わたしが赤い風変わりなブラウスに戦車靴を履くと

彼女は深くため息をついた。

髪の毛は仕方がないのでニット帽をかぶって抑えた。

会食に出かけてみると

相手の「母」という女の人は白髪もそのままの銀髪で

穏やかな表情に何処か楽しげな瞳をした人だった。

 

そしてゴビ砂漠の砂の音について話をしてくれた。

何度もずり落ちながら砂の山を登っては滑り落ち

案内をしてくれた知り合いに「ほらね、砂の音が毎回違うでしょう?」といわれても

最後まで分からなかったと言っていた。

 

私は思い浮かべた。

彼女と砂漠の砂山をずり落ちながら登り

滑り落ちながら「音」について語り合う二人。

そして二人の女は砂の中を旅して回る。

 

お酒もすすんで3杯目を注文したら、

娘が怖い顔をして睨んだ。

娘が私の母親でなくてホントによかった。