龍と女@断片のスケッチ

女は龍を飼っていた。

龍は彼女の痛み、悲しみ、恐怖を食べて育つから、彼女はもう何も怖くない。

どんなモノが相手でも、不安に牙をむき咀嚼し彼女を守ってくれる。

 

 

傘を持たずに出かけた雨の日、

ちっぽけな存在として消えてしまいたい気持ちになった彼女は

普段よりも艶やかで生き生きとした龍が、自分と一緒に歩いていることに気づいた。

だから今は傘を持たない雨の日が好きだった。

 

龍は彼女以外の誰にも姿を見せないが、

心を支えたのはこの一匹の龍だ。

 

彼女は今でも

この小さな不思議な生き物と一緒に歩いている。

 

 

断片スケッチ@龍と女