女とキツネ@断片スケッチ

 

ある日、まちを歩いていると民家の軒先に「自由にお持ちください」と書いた紙が貼られ

和装小物やバッグと一緒にキツネの襟巻きが置かれていた。

 

手足にはツメも残されていて、頭からシッポまでが実に立派で

まるで生きているようだった。

それを何にしようと思ったわけでもないが、わたしはそのキツネを連れて帰った。

 

一緒にいた母などは、「呪われそー」と恐ろしげなことをいう。

結局そのキツネは、神社に奉納されるでもなく、

しばらく自宅の押入れで眠っていた。

 

数年経て後、キツネは一人の女に貰われていった。

見ると立派な目を開いて女の首に巻かれ、これから散歩にでも出かける様子だ。

里親を見つけたとでもいうべきだろうか。

 

 

女は花のある人であった。

縫いものなどしている手元の写真を撮ったことがあったが

ファインダー越しに思わず「エロイ!」と叫ばせるほどのオーラを持っていた。

 

キツネも人を選ぶということだろうか。

 

何はともあれキツネは我が家の押入れから旅立ち

元々の持ち主を知らないわたしを離れていった。

 

エロさとは何か。

まだよく分からない。

きっと法則などは持たないシロモノなのだろう。

 

*断片スケッチ