祭りの晩

けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、

ガラスよりも水素よりもすきとおって、

ときどき眼の加減か、

ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、

虹のようにぎらっと光ったりしながら、

声もなくどんどん流れて行き、

野原にはあっちにもこっちにも、

燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。

 

「銀河鉄道の夜」宮沢賢治より

 

 

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実家にきていた子どもたちと連れ立って縁日に出かけた。

神社の入口には提灯が点され

普段は静かな境内は

人の波と裸電球の光りで溢れている。

 

キャラメルの箱を積み木のように組み立て景品が並んだ

射的の大きな回転台は巡り

子どもたちは夢中で駆けていく。

 

「子どもの頃、一緒に行った海。楽しかったね

 まだあの民宿あるのかな」

境内で偶然合流した親戚が懐かしそうに言った。

 

普段は忘れている風景を思い出したのも

縁日の電球が照らす

魔法のようなものかもしれない。

 

時を経て

子どもたちもいつかこの晩を思い出すだろうか。

祭囃子と人のどよめきと光りの波。