手紙

授業中、よく手紙が回ってきた。

それは手紙というよりかはメモも端っこのようなモノだ。

 

ある日突然、10代の頃に友人からもらった手紙が出てきた。

「今暇で前の席の○○が遊ぼうって言っている」とか

組んだばかりのバンドでデビューを目指そうとか

それは何かキラキラしたまぶしさを持っている。

 

それを書いた友人が

突然死んだ。

 

波のようにドッと思い出がおし寄せてくる。

 

あまりに突然の知らせだった。

携帯の向こうで「もしもし。聞いてる?もしもし」繰り返す友だちの声が響いていた。

 

よく自転車を二人乗りしては

真夜中の坂道をぴゅ-っと飛ばしてそいつの家に帰った。

 

亡くなった友人のために「枕花」をお花屋さんでアレンジしてもらっている間

百貨店に陳列された輝くばかりの商品も

どこか遠くのことのようで

まるで現実味がわかない。

 

葬儀の前に友人宅へ向かい

寝かされたその顔を見た。

あまりに穏やかな顔で

まるで今にも唇が動いて何か言いたげでもある。

 

心臓が止まり、呼吸が停止している肉体は

触れてみたら冷たく固かった。

 

焼き場の扉が開き

遺体が載せられた棺が扉のムコウに押し込められると

其の後、骨になった。

 

かつてわたしに「負けてらんないもんねっ」と書いた

眩しい手紙を送ってよこした人間の骨なのだ。

 

時間が過ぎていく。

友だちも骨になる。

 

まだ何となく実感がない。

儀式の一つ一つを終えて

これから時間が経てば

ふとしたとき

「あっもう居ないんだ」とあらためて実感として「死」を受け容れていいくのか知れない。

 

 

12月。

死にたい人が増える。

電話をよこす人もいる

「薬のんじゃった」

「手首きっちゃった」

この月は何か人を寂しい気持ちにさせるものなのかもしれない。

 

賑やかしいまちが空虚なものに見える。

虚空のまちの中を電車は走っていく。

 

 

明日は皆、炊き出しだ。

 

わたしも本当は行きたいけれど

まだ漫画が描けていないのです。

 

もう12月も半ばになった。

 

*イラスト猫澤賢治