ほろほろこぼれる春に佇む

けいこう舎 山﨑ノ箱 第2話 ほろほろこぼれる春に佇む 
けいこう舎 山﨑ノ箱 第2話 ほろほろこぼれる春に佇む 

犬が老いて亡くなった。

心づもりをしていたけれど

それはどうしようもなく

ひたすら救いを求め色んな記事や本を読み

音楽を聴いたりして

「どう考えたらいいのか」探していた。

 

それは通勤の帰り道

自宅の玄関を開けるときの痛烈な痛みとか

部屋のどこもかしこも犬の気配であふれていることだったり

「もう居ないのだ」ということの辛さだったりした。

 

でも一つには

自分が先に逝かなくて本当によかったということだ。

悲しい想いをさせずに済んだだけでも

それはそれでよかったのだ。

 

暗澹たる世界のひと処に桜の満開の樹。

それももう終わる。

4月。

 

 

編集工房けいこう舎マガジン